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くたびれ はてこのことを語る

「弱虫ペダル」の小野田君みたいに自転車で遠くの町まで専門書や謎の部品を買いに行ったりする。
スポーツはやらないけど、けっこうアウトドア。お互いの家にも行き来する。
だから年齢から考えるとびっくりするような知識や技術を持っていて、そこが魅力だった。
ポール・グレアムが描くオタク像ってそのころのオタクだと思う。

そして当時のオタクがほかの子が持ってない知識や技術を持っていながら人気がなかった理由は
みんなと同じもので盛り上がれなかったからだったと思う。

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「ハッカーと画家」読んでて思ったけど、わたしが子どものころのオタクって、作り手だったな。
上手いか下手かは別にして、ただ漫画やアニメといったサブカル好きの人たちじゃなかった。

もちろん電車みたいに作れないもののオタクもいたけど、
本を買ったり資格を取ったりするために外に出てる人たちだった。
田舎だったし、ネットもないしさ。

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「よそならいいけど身内じゃ御断り」というのは国際結婚などでもありますね。
でもc_cさんの楽しげな育児姿をご覧になったことで、その後その方のお孫さんや娘婿になる方たちへの視線に影響が及んだに違いありません。

ところで物語の中のスーパーミラクルワイルドダディは「マグロ漁船にでも乗ってるのか」という頻度でしか返ってこなくて、子どもが思春期に入って使えるようになるまで子育てノータッチが定石ですよね。
「スーパーマンリターンズ」でロイズの婚約者に子育てさせながら、1ドルの養育費も払わずちゃっかり父親顔しようとしているクラーク・ケントを見たときは「托卵もいい加減にしろ!」と思いました。

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くだらなおもしろいw

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エピローグ的なことがどうしても思い浮かばないので話はここで終わる。
まるちゃんのお話でした。

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その後わたしは倒れて仕事ができなくなったり、結婚したりして、また何度か引っ越した。
引っ越しをするたびまるちゃんのことを思い出す。そしてあの不気味な家のことも。

なんでまるちゃんをしっかり持って出なかったんだろう。
まるちゃんも一緒に引っ越したかったのに。

なんで家から出られなかったんだろう。
住んでいた家から出るなんてなんでもないことなのに。

そして最近思う。
あの家を無事に出て引っ越せたのはまるちゃんのおかげなんじゃないかな。
誰かがわたしの代わりにあそこに残らなきゃならなかったんじゃないかな。
あるいはわたしがまた戻ってくるように思わせなきゃならなかったんじゃないかな。

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自分で処分した覚えはない。荷物は全部持ってきたのに。
でも、わたしにとっての貴重品はどれもほかの人の目に価値のないものばかりだった。
小さな不用品、ゴミだと思われてもおかしくない。知人が早々に捨ててしまったのかもしれなかった。

それに気付いたとき、わたしは声を上げて小一時間泣いた。
色鉛筆や洋酒の箱はどこかで似たようなものを見つけることもできる。
でもまるちゃんはどこにもない人形なんだ。まるちゃん。わたしのだいじなまるちゃん。
わたしはまるで恩人かペットをなくしたような気持だった。
どうして自分の手荷物に入れておかなかったんだろう。悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいだった。

生まれてよかった、女の子でよかったと思わせてくれたまるちゃん。
母が作った抱き人形やまるちゃんの妹だと言って作ってくれた人形はあった。
でもそれはまるちゃんじゃなかった。嗚咽が止まらなかった。

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あれがなんだったのかわからない。あのままあそこにいたらどうなったのか。
何も起こらなかったんじゃないか、一種のヒステリー状態だったんじゃないかとも思う。
何をもってして「何も起こらない」というのかにもよるかもしれないけれど。

翌月、ようやく引っ越しが終わった。
わたしは残りの荷物を友人と二人でレンタカーに積み、新しい部屋へ運び込んだ。
そうして一週間ほどしたある日、荷物の中に自分にとっての貴重品の箱がないことに気付いた。
まるちゃんがいなくなった。

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「そうですね」
冷静に会話ができるようになってよかった。
「出られる?」
「出られると思います。ただ、出ちゃいけないような気がするんです」
知人は静かに、でもきっぱりと言った。
「でもそれに従う必要はないでしょう」
ぞっとした。冷静になったつもりだったのに、わたしはまだそれの指示に従おうとしている。
この電話が切れたらわたしはそれに抵抗できなくなるだろう。
「財布を持って、電気もそのままでいいから、すぐ家を出なさい」

わたしは携帯を握りしめたまま、家の前に停めた車もそのままにして歩いて国道まで出た。
その後のことはよく覚えていない。とにかくその晩は友人の家に泊めてもらい、昼過ぎまで家には戻らなかった。
そして二度と一人でその家に入らなかった。

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切れよ、電話なんてしなくていい。何も起きてない。何も見えないし聞こえないんだから。
馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの。思い込みなんだよ。電話切れよ電
「もしもし」
知人に電話が繋がった。こういうときは距離のある人の前にいるときの方が自分を保ちやすい。
わたしは手早く状況を説明した。説明しながら、頭がおかしいと思われるんじゃないか、と思った。
自意識過剰で人の気を引くために騒いでると思われるんじゃないか。
そうでなくともこの知人には日頃あまりよく思われていなかった。

「これまで住んでいた家に忘れ物を取りに入ったら、家の中…[全文を見る]

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もちおが電話越しに祈り始めると、わたしは強烈な違和感と焦りを覚えた。
何やってるの? 何も起きてないのに。電話を切りなさい。何も起きてない。何も起きてない。
「いいやめてもうやめて」
「大丈夫?」
「ごめん、なんでもない。ごめんね。大丈夫だから」
「ほんとに?」
「うん、何かあったらまた電話するからね、じゃあね。いまちょっと忙しいし」
馬鹿みたい、何も起きてないのに。大袈裟に芝居がかったことを、わざとやってるんだよ、この女は。
待って待って、切らないで。電話切らないで。
「じゃあ何かあったらすぐ電話してね」
もちおが電話を切った瞬間、わたしは頭を覆うぼんやりの隙をついて知人に電話をかけた。
彼は聖職者だった。

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「え、どうしたの?」
「まっすぐ、立ってるの・・・おまえに話すことはないよ!」

どうしよう、だれか呼ばなくちゃ。

「はてこさん、もしもし?」
「・・・」

電話が切れた。どうやらわたしが切ったのだった。切らなければいけないと思った。
切ってはいけないのに。
すぐにもちおから電話がかかってきた。

「もしもし? はてこさん、大丈夫?」
「・・・」
話してはいけないとわたしは思った。話すことは禁じられている。
体はどんどん硬直し、叫びたいほど緊張が高まっているのに頭は急速にぼんやりしていく。

「はてこさん、お祈りしようか」
「うん、そうして」

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わたしは煌々と明かりをつけた家の真ん中に直立不動で立っていた。
だれか呼ばなくちゃ。いそいでだれか呼ばなくちゃ。でも呼んでどうするの。どうにもならないのに。
わたしはもちおに電話をかけた。
「もしもし? はてこさん」
「・・・あのね」
「うん」
「・・・あのね」
「もしもし、どうかした? 荷物片付いた?」
「・・・あのね・・・わたし、いま、まっすぐ立ってるの」
わたしは高く裏返ったかすれ声で言った。

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家の中ではおかしなことがたくさんあった。
田舎だったので、留守中に猿が入ってきているんじゃないかと言った人もいた。
家にはネズミもいた。台所で鉢合わせてお互いにびっくりしたこともある。
でも、猿やネズミでは説明のつかないこともあった。

ずっと後になってから、わたしはあの家を借りたとき玄関にお札が貼ってあったのを思い出した。
わたしは入居したその日にそれを捨ててしまった。

また後日霊能者の知人に会ったときに「よくあんな家に住めると思った」と言われた。
「あなたはそういうの好きじゃないみたいだから、言わなかったけど」。

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わたしは家に入ると玄関の明かりをつけた。
台所と廊下の明かりをつけた。
居間にしていた座敷と奥の床の間のある部屋の明かりをつけた。
階段と二階の座敷二部屋両方の明かりをつけた。そして財布を見つけた。

どの部屋にもいまにも躍り上がって襲い掛かるような気配があった。
それは明かりを怖がっていなかった。それどころかその数はどんどん増えているようだった。
やっと帰ってきた。つかまえた。そう思っているようだった。

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ある日遂に荷造りが終わり、大きな荷物を業者に頼み、あとは小物をレンタカーに積んで帰るだけになった。
レンタカーは後日友人と運転してくることになっている。
わたしは家を出て用事を済ませ、まっすぐ仕事先の住まいに帰ろうとしてはたと、財布を忘れてきたことに気付いた。
あたりはもう真っ暗で、家はこれまで住んできたと思えないほど不気味な闇の中にあった。

玄関のガラスの引き戸越しに部屋を覘いて、わたしは背筋が固くなるのを感じた。
でも免許証も入っているのだから、財布がないと帰れない。

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荷造りの中心人物だった知人はコーディネーター気質で、不用品の貰い手を次々見つけた。
荷造りにしに家に帰ったわたしは、知人が不用品だけでなく必要なものもいくらか人にあげてしまったことを知った。
貰い手の手に渡る前にわかったものもあったけれど、もうなくなってしまったものもあった。
貴重品箱を作っておいてよかったとわたしは思った。

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次の部屋は27㎡のワンルームで、廊下部分も合わせて七畳ほどしかない。
一軒家から引っ越すには長年の一人暮らしで集まった荷物を大量に処分する必要があった。
使えるものは荷造りを手伝ってくれる友人知人に自由に持って行ってもらうことにした。

わたしは不用品と間違えられないように自分にとっての貴重品箱を作った。
ほかの人の目にはゴミのようなもの、でも自分にとってはかけがえのないものをそこに入れた。
洋酒の空き箱、大事な人にもらった色鉛筆、思い入れのあるグラス、わたしはそこにまるちゃんも入れた。

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一人暮らしを始めてから何度かの引っ越しをした。
あるとき大きな一軒家を一人で借りることになった。奇妙なことがたくさん起きる家だった。
その家を借りている間に遠方に就職が決まり、わたしは家をそのままにして就職先に移った。

半年ほどして仕事場の近くに部屋を借りることになり、わたしは家の荷物をまとめることにした。
近所に住んでいた知人が留守の間に荷造りを手伝ってくれると申し出てくれた。
休みのたびに長距離を移動して、わたしは荷物を片づけた。

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抱き人形に対してわたしはある種の責任を感じていたので、抱き人形はなるだけ目のつくところにおいた。
一方まるちゃんにはそんな風に気を使わなかった。まるちゃんはどこにいても大丈夫だ。
まるちゃんはわたしが必要になったときにそばにいられればいいのだった。
抱き人形みたいに面倒を見てやる必要はなかった。

少しずつ大きくなって、抱き人形に話しかけてやる時間が減り、抱き人形は悲しそうな顔になった。
まるちゃんは相変わらず口を真一文字に結び、少し藪にらみの頼もしい顔をしていた。
わたしはときどきまるちゃんを出してしみじみとまるちゃんとの出会いを思い出した。