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くたびれ はてこのことを語る

切れよ、電話なんてしなくていい。何も起きてない。何も見えないし聞こえないんだから。
馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの。思い込みなんだよ。電話切れよ電
「もしもし」
知人に電話が繋がった。こういうときは距離のある人の前にいるときの方が自分を保ちやすい。
わたしは手早く状況を説明した。説明しながら、頭がおかしいと思われるんじゃないか、と思った。
自意識過剰で人の気を引くために騒いでると思われるんじゃないか。
そうでなくともこの知人には日頃あまりよく思われていなかった。

「これまで住んでいた家に忘れ物を取りに入ったら、家の中に何かがいる感じがして外に出られないんです」
「そう。じゃあ一緒にお祈りをしようか」
知人は余計なことを言わなかった。知人が神に祈る声は真摯で落ち着いていて力強かった。
わたしは騒音が止まるように集中力が戻ってくるのを感じた。体の強張りが和らいだ。
「そこをすぐ出た方がいいね」