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くたびれ はてこのことを語る

「そうですね」
冷静に会話ができるようになってよかった。
「出られる?」
「出られると思います。ただ、出ちゃいけないような気がするんです」
知人は静かに、でもきっぱりと言った。
「でもそれに従う必要はないでしょう」
ぞっとした。冷静になったつもりだったのに、わたしはまだそれの指示に従おうとしている。
この電話が切れたらわたしはそれに抵抗できなくなるだろう。
「財布を持って、電気もそのままでいいから、すぐ家を出なさい」

わたしは携帯を握りしめたまま、家の前に停めた車もそのままにして歩いて国道まで出た。
その後のことはよく覚えていない。とにかくその晩は友人の家に泊めてもらい、昼過ぎまで家には戻らなかった。
そして二度と一人でその家に入らなかった。