そういう子にくっついていくと自分の知らない世界が広がって面白かった。
そういうわけでわたしはオタクと呼ばれる人たちと一緒にいる時間が長かった。
オタクに興味があるのであって、彼らの趣味には彼らほど興味がなかったので、何も身につかなかったけど。
いま漫画やアニメやラノベがすきな子たちは大勢いるけど、
オタクと呼べるほどの人はそんなにいないんじゃないかと思う。
だからサブカル好きで性格がねじくれている人がオタを自称して
「オタを差別するな!」
とか言い出すと、貴様の得意分野を何か出してみろよ、話はそれからだ。と思う。
「弱虫ペダル」の小野田君みたいに自転車で遠くの町まで専門書や謎の部品を買いに行ったりする。
スポーツはやらないけど、けっこうアウトドア。お互いの家にも行き来する。
だから年齢から考えるとびっくりするような知識や技術を持っていて、そこが魅力だった。
ポール・グレアムが描くオタク像ってそのころのオタクだと思う。
そして当時のオタクがほかの子が持ってない知識や技術を持っていながら人気がなかった理由は
みんなと同じもので盛り上がれなかったからだったと思う。
「ハッカーと画家」読んでて思ったけど、わたしが子どものころのオタクって、作り手だったな。
上手いか下手かは別にして、ただ漫画やアニメといったサブカル好きの人たちじゃなかった。
もちろん電車みたいに作れないもののオタクもいたけど、
本を買ったり資格を取ったりするために外に出てる人たちだった。
田舎だったし、ネットもないしさ。
車内は大変混雑いたしますので、挫折は詰めてくださいますようお願い申し上げます。
「よそならいいけど身内じゃ御断り」というのは国際結婚などでもありますね。
でもc_cさんの楽しげな育児姿をご覧になったことで、その後その方のお孫さんや娘婿になる方たちへの視線に影響が及んだに違いありません。
ところで物語の中のスーパーミラクルワイルドダディは「マグロ漁船にでも乗ってるのか」という頻度でしか返ってこなくて、子どもが思春期に入って使えるようになるまで子育てノータッチが定石ですよね。
「スーパーマンリターンズ」でロイズの婚約者に子育てさせながら、1ドルの養育費も払わずちゃっかり父親顔しようとしているクラーク・ケントを見たときは「托卵もいい加減にしろ!」と思いました。
エピローグ的なことがどうしても思い浮かばないので話はここで終わる。
まるちゃんのお話でした。
おいおい、いまのが震度2、3じゃ納得いかないよ@神奈川寄りの東京都
その後わたしは倒れて仕事ができなくなったり、結婚したりして、また何度か引っ越した。
引っ越しをするたびまるちゃんのことを思い出す。そしてあの不気味な家のことも。
なんでまるちゃんをしっかり持って出なかったんだろう。
まるちゃんも一緒に引っ越したかったのに。
なんで家から出られなかったんだろう。
住んでいた家から出るなんてなんでもないことなのに。
そして最近思う。
あの家を無事に出て引っ越せたのはまるちゃんのおかげなんじゃないかな。
誰かがわたしの代わりにあそこに残らなきゃならなかったんじゃないかな。
あるいはわたしがまた戻ってくるように思わせなきゃならなかったんじゃないかな。
自分で処分した覚えはない。荷物は全部持ってきたのに。
でも、わたしにとっての貴重品はどれもほかの人の目に価値のないものばかりだった。
小さな不用品、ゴミだと思われてもおかしくない。知人が早々に捨ててしまったのかもしれなかった。
それに気付いたとき、わたしは声を上げて小一時間泣いた。
色鉛筆や洋酒の箱はどこかで似たようなものを見つけることもできる。
でもまるちゃんはどこにもない人形なんだ。まるちゃん。わたしのだいじなまるちゃん。
わたしはまるで恩人かペットをなくしたような気持だった。
どうして自分の手荷物に入れておかなかったんだろう。悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいだった。
生まれてよかった、女の子でよかったと思わせてくれたまるちゃん。
母が作った抱き人形やまるちゃんの妹だと言って作ってくれた人形はあった。
でもそれはまるちゃんじゃなかった。嗚咽が止まらなかった。
あれがなんだったのかわからない。あのままあそこにいたらどうなったのか。
何も起こらなかったんじゃないか、一種のヒステリー状態だったんじゃないかとも思う。
何をもってして「何も起こらない」というのかにもよるかもしれないけれど。
翌月、ようやく引っ越しが終わった。
わたしは残りの荷物を友人と二人でレンタカーに積み、新しい部屋へ運び込んだ。
そうして一週間ほどしたある日、荷物の中に自分にとっての貴重品の箱がないことに気付いた。
まるちゃんがいなくなった。
「そうですね」
冷静に会話ができるようになってよかった。
「出られる?」
「出られると思います。ただ、出ちゃいけないような気がするんです」
知人は静かに、でもきっぱりと言った。
「でもそれに従う必要はないでしょう」
ぞっとした。冷静になったつもりだったのに、わたしはまだそれの指示に従おうとしている。
この電話が切れたらわたしはそれに抵抗できなくなるだろう。
「財布を持って、電気もそのままでいいから、すぐ家を出なさい」
わたしは携帯を握りしめたまま、家の前に停めた車もそのままにして歩いて国道まで出た。
その後のことはよく覚えていない。とにかくその晩は友人の家に泊めてもらい、昼過ぎまで家には戻らなかった。
そして二度と一人でその家に入らなかった。
切れよ、電話なんてしなくていい。何も起きてない。何も見えないし聞こえないんだから。
馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの。思い込みなんだよ。電話切れよ電
「もしもし」
知人に電話が繋がった。こういうときは距離のある人の前にいるときの方が自分を保ちやすい。
わたしは手早く状況を説明した。説明しながら、頭がおかしいと思われるんじゃないか、と思った。
自意識過剰で人の気を引くために騒いでると思われるんじゃないか。
そうでなくともこの知人には日頃あまりよく思われていなかった。
「これまで住んでいた家に忘れ物を取りに入ったら、家の中…[全文を見る]
もちおが電話越しに祈り始めると、わたしは強烈な違和感と焦りを覚えた。
何やってるの? 何も起きてないのに。電話を切りなさい。何も起きてない。何も起きてない。
「いいやめてもうやめて」
「大丈夫?」
「ごめん、なんでもない。ごめんね。大丈夫だから」
「ほんとに?」
「うん、何かあったらまた電話するからね、じゃあね。いまちょっと忙しいし」
馬鹿みたい、何も起きてないのに。大袈裟に芝居がかったことを、わざとやってるんだよ、この女は。
待って待って、切らないで。電話切らないで。
「じゃあ何かあったらすぐ電話してね」
もちおが電話を切った瞬間、わたしは頭を覆うぼんやりの隙をついて知人に電話をかけた。
彼は聖職者だった。
「え、どうしたの?」
「まっすぐ、立ってるの・・・おまえに話すことはないよ!」
どうしよう、だれか呼ばなくちゃ。
「はてこさん、もしもし?」
「・・・」
電話が切れた。どうやらわたしが切ったのだった。切らなければいけないと思った。
切ってはいけないのに。
すぐにもちおから電話がかかってきた。
「もしもし? はてこさん、大丈夫?」
「・・・」
話してはいけないとわたしは思った。話すことは禁じられている。
体はどんどん硬直し、叫びたいほど緊張が高まっているのに頭は急速にぼんやりしていく。
「はてこさん、お祈りしようか」
「うん、そうして」
わたしは煌々と明かりをつけた家の真ん中に直立不動で立っていた。
だれか呼ばなくちゃ。いそいでだれか呼ばなくちゃ。でも呼んでどうするの。どうにもならないのに。
わたしはもちおに電話をかけた。
「もしもし? はてこさん」
「・・・あのね」
「うん」
「・・・あのね」
「もしもし、どうかした? 荷物片付いた?」
「・・・あのね・・・わたし、いま、まっすぐ立ってるの」
わたしは高く裏返ったかすれ声で言った。