「いまはさ、サザエもいいなと思ってんだ」おじさんはそう言って実物大のサザエを銅で鋳造した蓋置きを見せてくれた。一見蓋が平らに乗るように見えないけれど、乗せてみるとちゃんと乗る。「量産出来ないんですか」「うん、こうして作ったものを今度シリコンで型どりしてそこから鋳型を作れば量産できるよ。でも、鋳型作るのにえらい手間かかるから、それはそれで大変なんだ」コピーとオフセット印刷みたいなものですね、わかります。と心のなかでコミケを思い出していた。
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くたびれ はてこのことを語る
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おじさんは蝋を削って蓋置きを作るのがすきなように見えた。「俺ほんとは蓋作る職人なのよ」鉄瓶の蓋を作るのが本業なんだって。蓋置きというものは蓋を支えるところが三点あればどんなデザインでも作れる。おじさんはカエラーとしていつかカエルの蓋置きを作りたいのだけれど、カエル一匹じゃどうにもその三点を見いだせない。「カエル二匹じゃどうですか」「やってみたんだよ。二匹じゃどんなのかわかると思うけど、これじゃ困るって言われて」えー、どんなの?「…交尾してるとこだったんだよ」あー。「でもそれお茶の先生買っていったけどね。面白いっつって。『これは出せないわ~』って言いながら。すきなんだって、そういうの」お茶の先生趣味の蓋置き2万円ご購入で山形を支える活動おつかれさまです。
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おじさんは意欲的に作品に取り組んでいて、人が三人背中合わせに立つという伝統的な蓋置きを猿で作ったり、同じく伝統的な一閑人という井戸を覗き込む人のデザインを猿で作ったりしている。これまでにないもの、ちょっとめずらしいものを作るのがすきなんだって。「裏、ちょっと見て」というので裏返してみると、兎の脚には肉球が彫ってあった。「でもこれは猫見て作ったから、ちょっと兎と違うんだよね」。「兎を作ろうと思って兎を見に行ったんだけど、あんまり兎が動かないもんだから、家帰ってさ、うちにコーギーがいるのよ。それがお利口で、じっとしてろって言ったらじっとしてるから、それ見て作ったんだ」「確かにちょっと犬っぽいですね」「あー、もっと犬っぽいのもあったんだけど、それは年末に売れちゃったんだよ」おじさんは犬っぽい仕上がりの兎にまんざらでもない様子だった。
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小さな井戸の蓋に小指の先ほどのカエルの鋳造がかいらしかいらしですなーと思ってニヨニヨ見ていたら、おじさんもカエラーだそうで、そこから蛙愛あふれるカエルトークが炸裂して意気投合。「これ見て作ったんだ」と海洋堂ガチャポンフィギュアみたいなゴムのカエルを見せてくれた。並べるとよく似ている。「でもこれはどっかジャングルの方にいるカエルでさ、顔が違うんだよね」「ちょっと指を長くしてみたんだ」カエルがすきなのでカエルをモチーフに何か作りたいと思うけれど、カエルは大きくつくると気味が悪いものになるのでそこが難しい。あとでもちおと待ち合わせておじさんの逸話と共に見せたところ、もちおは「ああ、なるほどジャングルの。すごい毒持ってそうですね」と言っていた。
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おじさんちは代々鋳造の仕事をしてきた。ある日4代前の先祖が神社に収めた燈籠が倒れたから直してしてほしいという電話がきた。どうやって調べたかというと、燈籠の後ろに作った人たちの名前と住所が書いてあったのだとか。同じ住所にまだ住んで、同じ仕事を続けていたことにびっくりする。でもおじさんちはおじさんの代で終わり。お嬢さんが二人いると聞いて、お嬢さんはお仕事を続けられないのですか? と聞いたらおじさんはとても驚いて複雑な顔をしていた。神主さんにお嬢さんは神主にならないのですか、と聞いたらこんな感じかなと思った。
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亀売りのおじさんのこと
かちこんかちこん人差し指くらいの金属の杭のようなものを小さな金槌を叩いて銅の皿を彫っているのがめずらしく、デパートでこれは何ですかと話しかけて小一時間見ていた。おじさんはほんのり山形弁で鋳造に関するあれこれを話してくれた。小粒の蜜柑くらいの兎や猿や蟹が売っていた。これがとてもかわいい。文鎮か置物なんだろうと思ったら、鉄瓶の蓋を置く物なのだそう。もうほんとにかわいいけど2万円。銅の鋳物は量産できないので小物を作ってもこのくらいの価格じゃないと採算とれないんだって。でもお茶の世界にはこういうものを面白いと思って買う人がいるのだそう。お茶道楽のみなさんが日本の伝統工芸を支えておるのですねと思った。
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たったいま亀が慌ただしく島へと旅立った。一泊二日しかいなかった。うさぎと競走中なのかもしれない。
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パパハイカー&ママハイカーズの子どもすきすきハイクを見ると、
「そうか、こんな風に思ってくれる人もいるんだ」
となんか自分がすきと言われたかのように癒される。勝手に家の子になりすますエア家庭侵入。
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おかんはインターフォンをピポピポーン!と鳴らしてドアノブをいきなり引っ張るのですぐわかる。
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一人暮らしの時は電話が鳴ったらそれだけで胸が高鳴ったけど、すっかり電話嫌い。
電話鳴るとドキッとして胃がぎゅっとなる。留守電の再生さえしたくない。
いまじゃ余裕で居留守を使うはてこであった。
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こういうことになるから、親が老齢になる前に子ども産んでおいた方がいいんだなあ。
親に子どもと張り合われたら困るよね。
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あのひと子どもたくさん産んでよかったと思うわ。
子どもがまた親思い揃いで幸せだわ。半分ぐらいしか育てなかったのに投資に対して抜群の回収率じゃん。
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裏切られないためにはどうしたらいいか。自分が相手を操作すればいいんだ!
というわけで、人の自由意志とか予想外の行動とか思わぬ失敗とか超警戒する。
でも老後一人でどうすんだと思うとついそばにいてやろうかなんて考えちゃう。
だけどわたしはおかんにとっては手駒なのよねー。
資源がほしいだけで意志とか無駄なのよねー。
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おかんを一言で言い表すと「人間不信」だ。
人は利己的でいつか裏切るか、現在裏切ってるかどちらかだと思ってる。
でもそう思っていることを悟られないようにしなくちゃ! っていうのが見え見えでアイタタタと思う。
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親に褒められたことがない、って言う人いるけど、わたしはあるかないかって言ったらすごく褒められた。
でもそれって褒めてるんじゃなくて、誘導して操作しようとしてるのが見え見えで、そこから逸れたらボロクソ言うからいややわー。
「あら、いいじゃない、すごく似合う! かわいい! それにすれば? え、そっちは変よ、おかしい、似合わないわ、人から笑われるわ、強情ね、じゃあもう知らない好きにすれば!!!」
みたいな。
「思ってなくてもポジティブな言葉を繰り返せば効果がある」的な考え方を眉唾だと思う理由はそこなんだよね。
おためごかしって誰でも嫌いじゃーん。
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くよくよするわー。
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向こうの頼みごとなのに、なんか借金の催促されてる感じ。
でも今はもちおが盛大にぶーぶー言ってくれるので自分が悪いとばかり思わなくてすむ。
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器でも何でもちょっとなんか借りると盗られると思ってる。みなぎる不信感がたまらない。
ときどき惣菜を届けてくれるんだけど、とっとと器を返さないとあとで面倒。
わたしが大事にしてたものをちょっと貸してといってずいぶんなくしたり返さなかったりしてるから、人もやると思ってるな。
くたびれ はてこのことを語る
おかんの頼みを親族の気安さで引き受けるんだけど、いったん引き受けるとビジネスライクな要求されるからいややわー。
お金払ったくらいの気持ちで対価を要求してくるよな。無料より高いものはない。もうやらん。と、いつも思う。
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お弟子さんが原型を型どりして作ったものでけして高価なものではありませんが、亀感あふれるすばらしい仕上がりだと思います。
「さすが人間国宝、亀を見ながら亀を作ったんだろうな」
自分ちで飼っているコーギーを見ながらウサギを作ったり、猫の肉球を見ながらウサギの肉球を彫ったという売り場の鋳物師さんがおっしゃっていました。
/くたびれ はてこ