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「暗い嵐の夜だった…」から始まる超短篇のことを語る

暗い嵐の夜だった…
ぼくときみは大きな雨粒が窓ガラスを叩く音を聞かないように、お互いの耳を塞ぎあってじっとしていた。
ベッドの、なるべく真ん中のほうで、かき集めた枕と毛布に囲まれて「早く眠ってしまえますように」とお祈りした。
お父さんのお兄さんのおうちみたいに、倒れた木の下敷きになってしまうなら、どうか、そんな恐ろしいことはぼくときみが眠っているあいだに終わりますように。
きみに話しかけようか迷ったけれど、ぼくがきみの耳を塞いでいるから、やめた。
きみにもっとぎゅっとして欲しかったけど、言わなかった。
雨の音と、びょうびょうと鳴る風の音と、きろきろと忙しくまわる風見鶏の音が、きみの手の隙間からこぼれてずっと聞こえていた。
ぼくはもう、なにも考えることがなくなって、聞きたくない嵐の音に耳をすませていた。
 
 
ふわふわした、なんだかとっても気持ちのいい場所でゆらゆら揺られる夢から目が覚めた。
窓から太陽の光がたくさん差し込んでいた。
ぼくは柔らかな毛布に包まれていて、きみはベッドの隅っこでただのテディベアに戻って転がっていた。