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学生時代の思い出のことを語る

枕投げで思い出したけど、中学の修学旅行で、何かの理由で部屋から出て戻ったら、自分の布団がなくなっていたことがあった。
どこだろうとしばらく探したけれどよくわからない。みんな布団に入ってシーンとしている。でも何か嫌な空気。
こいつら布団隠して困らせようとしてるな。でも聞くのはしゃくだ。布団がないなら布団部屋から出せばいいや。
それで大部屋の手前にある布団部屋へ行ってみた。
ところが布団部屋に行ってみたら、豆電球に赤く照らされた四畳半に押入れだけというこじんまりぶりに強く惹きつけられた。
それでそのまま押入れに入って襖を閉め、まったりしていた。

しばらくすると襖がすうっと開く音がして、大部屋で生徒らが慌てている声が聞こえてきた。
「くたびれさん、いないよ?!」
「先生に言いに行ったんやない?!」
「え・・・!!」
慌ててる、慌ててる。押入れも開けられたが、わたしは上手く片側に身を寄せ、布団の影に隠れていた。
そのうち何人かが部屋を出て、小声で暗い廊下をうろうろしながらはてこを探し始めた。

わたしは小さいころから隠れるのが大好きだった。
親と買い物に行ってもやたらと吊るされた服の間や重ねた子供用プールの間に隠れたり
自宅でも机と椅子の間に隠れて椅子を引いておき、家族を驚かせたり怒らせたりしてきた。
それで、少なからぬクラスメイトが目の前の布団部屋に気付かず、必死に自分を探している状況におかしさが込み上げてきた。
お腹の底がくすぐったくなり、笑いをかみ殺しながらたいへん愉快な気分でいた。
みなさん超必死wwwはてこはwwここにいるのにwwwww

しかしクラスメイトの必死さを面白がることへの罪悪感もありが湧いてきて、みなが布団部屋前で右往左往している最中
「わっ!」
と言って自分から押入れの襖を開けた。みながひゃっ!と声を上げた。
「もー・・・なしー?いつからここにおったん?」「最初からここにおったよ?」
みなは妙にフレンドリーで、わたしは大得意だった。そしてみなが部屋で一緒に寝ようと誘うなか
「ここで寝る」
と言って、布団部屋に新しく一組布団を敷いて、寝た。
大部屋で両脇を挟まれて眠るより布団部屋で個室を独占する方が広いことに気がついたのであった。
翌朝明るくなってから大部屋を見たら、はてこの布団が隅に寄せてあった。

そしてつい先ほど気が付いたのですが、
あれはあからさまな仲間外れを可視化した典型的なイジメでしたのね。
あいつらが自分で撒いた種なんだから、あんまり隠れて困らせたら悪いなあなんて同情してやる必要なんてなかった。
ASでよかったよ。
困惑したし、くだらなくってイラついたし、なんだか陰湿で嫌な感じはしたけれど
布団を隠した子らがわたしに思い知らせたいと思ったであろう言外のメッセージは
わたしには伝わらなかったから。
伝わっていたら、助けてもらえず一人で問題解決しなければならないことを惨めに感じたかもしれなかった。
「仲間の一員として認められたい、認められているはず」
と思っていなくて幸いだった。
「もう寝るのに布団がないよ。なんで?さっきまであったのに。まあいいや。新しい布団出そう」
と思う程度で済んだ。対決もしなかったし、謝罪も求めなかった。そっちに向かっていたらものすごく傷ついたかもしれない。

考えてみるとこういう、場で繋がったメンバーから仲間外れにされたことは、気が付いた範囲以上にあったのかもしれない。
そのたび「自分ですきに行動していいってことだ」と思って、好き勝手に自分の世界を開拓してきた。そこで友だちも出来た。
そういう目に遭わないように協調しろと強要する大人がいなくてよかった。
と、思ったけど、よく考えたら大勢いたけど馬耳東風だったんだった。でもそんな子供でよかったと思う。
協調しようとしたって無理だって分かる今ではなおさら。