初めてのニューヨーク滞在はちょうどその期間旅行に出ている友人のフラットに泊まらせてもらった。
出発するときは戸締りをして鍵をドアの下から投げ込んで返すという約束になっていた。
で帰国の日、鍵をドアの下のぎりぎりの隙間に入れたら鍵が見えている状態でがちっと引っかかってしまった。
たまたま買っていたグッゲンハイム美術館のアルミ製の定規を荷物から出して押したり引いたりするのだけど嵌り込んでぜんぜん動かない。
迫り来るフライトの時間…!
マンションの廊下でドアの下を覗いてごそごそやっている東洋人2人組を冷ややかに眺めて通り過ぎる近隣住人…!
ついにほんとうに時間がなくなって友人に心で詫びながら、せめて少しでも鍵本体が外から見えないようにしようとちょっと斜めに押したらかちゃっという音とともに鍵が動き、滑るように家の中に入っていった。
おみやげにするはずだったアルミ製の定規はぎたぎたに曲がっていた。
わたしたちは目についたゴミ箱にその定規を捨て、タクシーで空港まですっ飛ばしぎりぎりに搭乗した。
定規、記念にとっておけばおもしろかった気もするけどあのときは捨てずにいられなかったのだ。
自分の身に起こったことのある非常事態のことを語る
