初冬の朝の青空の下、勤務先への途上。
駅近くのスーパーに備え付けられた紙パック回収箱に、前日使い切った1リットルのリキッドコーヒーのコーヒーの紙パックを投入して駅に向かって歩き出したとき、前方から地を這うようにして帽子が飛んできた。持ち主はスーパーの警備員で、店の前のショッピングカートを整理している最中に吹いた突風で制帽が飛ばされたのだ。帽子は警備員と私の中間で止まり、双方が小走りに近づいて、帽子を挟んで一瞬顔を見合わせた後、警備員が自ら拾い上げて、ばつが悪そうに口を開いた。「いやはや突風ですね」
「それに冷たい風ですね」と私は応える。
警備員は振り返って駅の向こうの高層集合住宅を見やり、「あれが建ってから、ビル風がひどくなったのですよ」と言った。表情は見えなかったが、口調には苦々しいものが滲んだ。
建物の向こうには、雲ひとつない空に白く丸い月が浮かんでいた。
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