この人たちはすぐに乾いてしまい、自分の袖が濡れてしまったことなど思い出しもしますまい。帝だけが、心にいささか海の苦みをとどめるでしょうが。この人びとは画のなかで死ぬようにはできていないのです。 マルグリット・ユルスナール「老絵師の行方」