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読了のことを語る

立石 和弘『男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか』中公新書、2008。

asin:4121019652
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いまいち論述がこなれていない(何が言いたいかよくわからない、論拠→結論が明確でない)本でしたが、一つ重要な指摘が。
 
「なぜ嫁盗みは不幸に終わるのか。規範を逸脱する主人公にある種のあこがれが投射されているのだとすれば、その延長に幸福な結末が用意されていてもよいであろう。しかし、規範を破った男女が幸せになるのなら、規範に縛り付けられて日常を生きる人間は救われない。それゆえ、略奪婚の物語は不幸に終わらなければならないのであろう。読者が求めているのは、物語によって得られるひとときのカタルシスであり、規範の枠内に生きる自己の否定ではない。辟易しながらも規範に従う、その努力は報われなければならない。」p195
 
これはBL百合の一部作品に見受けられる、「同性愛を題材としながら結局悲劇に終わる」作品の構造と似ている、と思った。
ちなみにこの本の筆者は「腐女子」の定義を間違えています(2ch界隈にも見られる「女オタク」=「腐女子」という誤解)。あとケータイ文学は文学少女が書いてるんじゃないと思うなー。古典学者が現代に無知なことをさらしている例ですね。