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せきららこのことを語る

手裏剣戦隊ニンニンジャー

すずめばち回。敵方の怪物が、戦隊側の人間(今回は青)に恋愛感情を抱く、というもの。
感情が友情や仲間意識等、いろいろ変わるけれど、定期的に挟まれるお約束回といってもいいと思うのだが、このシリーズのこの回は、後味が悪かったなー…

割と、「敵方の友好的な感情を、利用して作戦を遂行する」という話になりがちではあるんだけど、そこに罪悪感が全くなかったり、罪悪感がお門違い、だったりするのは、どうなんだろう。
脚本、演出、鈍感過ぎないか…?

結果的に友好的な関係が崩れてしまうというラストにならざる得ないから哀しいお話、になるしかないんだけど、今回は結局、そうやって導かれたラストに、騙してる方が自己陶酔してる、っていう。

敵方が抱いた恋愛感情を利用して、敵に気を持たせつつ、自らが瀕死の状態になって敵からキーアイテムを奪う…という作戦だったのだけど、そういうものを「ロミオとジュリエット作戦」とかいっちゃって、おまえシェイクスピアとロミオとジュリエットに謝れ、って感じ…ロミジュリが物語として好きじゃない私でも、そういう話をロミジュリ作戦といってしまう失礼さはわかる…つもり…

種明かしをするシーンで、ハードボイルドな音楽がかかって「忍者は目的のために手段を選ばない」とか言い出したから、その手段には、相手を傷つける事、も入ってるのかな、と一瞬期待したのだが、そういう話にもならなかったようだ。
強いて言うなら、「命をかけなくても(アイテムを奪う)方法があったんじゃないか」「(敵の恋心が本気だったから)自分も命をかけた」という趣旨のやりとりが、それに近いっちゃ近いのだけれども、これは結局、作戦に命をかけた自分に酔ってるようにもみえるし(ていうか、9割それにしか見えないし…)終始「相手の恋愛感情を利用して騙した、ということで相手を傷つけるということ」に無自覚で、無自覚っていうか、全く気がついていない脚本なのだった。

そもそも、子供向け番組で、相手の本気を利用して目的を遂行する事、にそんなに肯定的でいいのだろうか……といったら、当然良くないわけで、その言い訳として用意されていたのは、ロボ戦(一回死んだ後巨大化してロボと戦う)で、一目見たロボに惚れてしまう、というエピソードで…(この”女”は、たった今哀しい失恋をしたばかりなのに、一瞬にして別の”男”に惚れてしまうような惚れっぽい女なんですよー)もちろん、このエピソードは、子供向け番組として、コメディタッチにすることでオチをつけた、ような意味合いもあるとは思うんだけど、それに、これを選ぶ無神経さよ…。

挙句決定的だったのは、エピローグで、惚れられた青、を仲間全員でからかうんだよね。そのからかいには、特別な悪意をもってやるものではなくて、「ヒューヒュー」「結構悪い気はしなかったんじゃないのー」的なものなんだけど、それがもう、「ブスに惚れられた男を仲間内で笑いあう」という絵面にしかみえなくて。(その仲間内には、その男性と釣り合う女性、も混じってる)
だって、恋して騙されて切られた女性は、異形の者、なんですよ…
あまりにもデリカシーがないと思うのだ。騙した相手に。
でも、そのデリカシーの無さに、主人公サイドは全く気がついていない、ということが、つまりそれは、作り手のデリカシーの無さだと思うのだ。