「事実関係に関する供述は兎も角、自白に証拠性はないと僕は思うがね。動機は後から訊かれて考えるものなんだ。その時点で犯罪者は傍観者と同じ立場になってしまっている。自分がまず日常に帰るために、いかに自分で自分を納得させ得る理由を見出すか、必死で考えるんだ。それが動機だ。それが真実なのかそうでないのかは第三者に判らないだけでなく、本人にだって判りはしない。そんなものをあれこれ詮議するのは無駄なことだし、訳知り顔で解説することなど愚の骨頂と思わんか?」
「魍魎の匣」京極夏彦
「事実関係に関する供述は兎も角、自白に証拠性はないと僕は思うがね。動機は後から訊かれて考えるものなんだ。その時点で犯罪者は傍観者と同じ立場になってしまっている。自分がまず日常に帰るために、いかに自分で自分を納得させ得る理由を見出すか、必死で考えるんだ。それが動機だ。それが真実なのかそうでないのかは第三者に判らないだけでなく、本人にだって判りはしない。そんなものをあれこれ詮議するのは無駄なことだし、訳知り顔で解説することなど愚の骨頂と思わんか?」
「魍魎の匣」京極夏彦