新たな日本のロックの文体を作りつつある破格の新人バンド。 音楽関係のメディアに関わっていて、仕事としてのおもしろさを感じることがいくつかあるが、「これは!」と思える新人グループに出会った時の喜びもその中の大きなもののひとつである。 しかもそれが、まだ世間で知られていない新人だと、思わずほくそえんだりしてしまう。 (中略) さてそこでエレファントカシマシだが、これは僕にとって年に一度、あるいは数年に一度といっていいくらいの出会いの感動を与えてくれたグループである。 まず、今までの日本のロックにない文体を持った言葉の感覚に驚いたし、それを伝えるメロディーの明快さと、ヴォーカルの力強さが、新人バンドとしては群を抜いていた。 デビュー・アルバムを聴くと、あまりにもクリアーに言葉が耳に入ってくるのに驚かされる。 これはメロディーが言葉の付属物になったり、あるいはその逆になったりせず、言葉のリズムとアクセントに忠実にメロディーが作られ、メロディーの骨格がしっかりしているからである。
渋谷陽一 ロッキング・オン・ジャパン1988年4月号