id:hide-psy
勝手に引用のことを語る

“君はまだ神は一つでなきゃいけないと思ってるんだな。まあ、それは認めてもいい。しかし、唯一絶対のあり方は様々なんだ。同じアッラーの神を崇拝しようとも、神の言葉の解釈によって、アッラーの存在も変わってしまうだろう。にもかかわらず、アッラーは唯一絶対だというのなら、こういうことになるな。神は変幻自在である、と。人間の解釈によって神が変わるのか、神が変わるのか。神自身が人間の思惑を超えて勝手に変わるのか、そんなことは考えてみても始まらない。これだけは確かだ。神は複数であると同時に単数なのだ。神が一つだなんて、神をそんなに単純に考えるな。神は絶えず自らを模造し、何かになり変わっているのだ。神には親も兄弟もないし、生死もない。けれども、人間の理解力に応じて分身を作ったり、人間そっくりの姿で恋愛をしたり、喧嘩をしたり、生まれたり死んだりして人間をからかい、人間と遊んでいる。”

「預言者の名前」島田雅彦