シムノン『倫敦から来た男』
シムノンを愛する人がなにを、なぜ愛するのかやっとやっとわかった気がする。
これまでシムノンの作品はいくつか読んだことがあるという程度。
矮小さも含めて人間に寄り添う視線というのを頭では理解していてもなんとなく息苦しい気がして必ずしも好んで読みたいわけじゃなかった。
卑小な人間がほんとにどうしようもない卑小な罪を犯すんだけどその罪と運命に向き合っていくうちに言いようもない気高さに辿り着いてしまう。
こうやって書くととても凡庸になってしまうのでわたくしの感じた強いて言えばフランドルの絵画に稀に差してくる光みたいなあれは小説でないと表現できないのだろうと思う。