【10月20日】
「かなしくて、かなしくて、とてもやりきれない」と30年以上前に歌ったアーティストが死んだ。自殺である。
『やりたいことがもう何もない』と遺書だか、知人に宛てた手紙だかにあったそうだ。
鬱だったのだろう。それは分かる。とてもよく分かるのだ。
私だってこれまでの人生で、鬱状態に陥ったことがなかったわけじゃない。死を身近に感じたことだってある。しかし、それでもなんとかやってきた。
亡くなったアーティストは62歳で、若い頃からずっと世の中に知られた存在だった。だからこそ、自らのあり方を常に自分に問いかけざるを得なかったのだろう。それがどんなに厳しくつらいことだったか。想像するに余りある。
しかし、やはり考えてしまう。やりたいことがないと生きていけないのか、と。ただ生きているだけではダメなのだろうか。生まれてから今までを生きてきたことをよすがとして、この先の人生を生きてはいけないのだろうか。
永井するみ「道化師」(「秘密は日記に隠すもの」所収)
これ、日記形態でしばらく綴られていくがだんだんその周辺や日記の作者の素性が明らかになり
びっくりする落ちで終わる短編集であるが、これは、今の仕事をしている自分にとって「も」重いテーマだ。