id:dominique1228
勝手に引用のことを語る

 アメリカの大学生は、日本のオシャレな学生たちの憧れとは裏腹にまったく着るものに無頓着に見える。そのノンシャランスさが、たまらなくカッコよかった。学生たちの無頓着な佇まいが、漱石の作品の中の高等遊民たちを思い出させるのだ。
 桜の花の嵐の下で、男たちは酒を酌み交わす。あるいは夜のカフェでコーヒーを飲みながら、延々と議論を繰り返す。
 このような無為な時間は若い一時期にしか持つことが出来ない、ということに、ひとはずっと年老いてから気付く。実はこの無為な時間こそ、とても貴重な宝物だったのだ。
___小西康陽「ステンカラーのコートについて」