手許にいちばん数多くあるのはエールフランス便に乗ったときの、機内食のカトラリーセット。フォーク、ナイフ、スプーンとどれも短か目で安っぽいものなのだが、プラスティックの柄の部分は、白地にフレンチブルーの流線のストライプ。きゃー、可愛いー、と食べ終わった途端にナプキンで拭いてジャケットのポケットにしまい込んだ。
エコノミークラスに乗ってはこんなことを繰り返し、いまでは半ダースぐらいは揃っている。ところがビジネスクラスで旅するようになると、これががっかり。普通のつまらない銀の食器。そしてエコノミークラスも9.11以来プラスティックのちゃちなものに替わってしまったはずだ。
さて、こうした略奪を繰り返し成功させる秘訣はひとつ。ひと目惚れしたら、躊躇しない。コレに尽きる。女性に対しても同じである。復唱しよう。ひと目惚れしたら躊躇しない。奪うのみである。
(中略)
キース・リチャーズは麻薬不法所持で初めて家宅捜査されたとき、世界中のホテルから持ち帰ってきた大量の石鹸やシャンプーを押収されたという。我等がヒーローである。
___小西康陽「キース・リチャーズに敬礼。」
勝手に引用のことを語る