「僕はエロ本編集者だったから、そういうAVの子とか風俗嬢とか仕事でのつきあいがあるでしょ。すると、よくわかるんだけど、みんな頑張ってるんですよ。あの子たちは決して自分はこうだってことは言わないし、実はヘンな男にひっかかったりもしてるけど、頑張って生きてる。そりゃ生まれ育った条件は、父親がどうとか家庭が複雑とかいろいろあるけど、少なくともそういうところに“落ちてきた”なんて感覚はないわけですよ。なのに、AVに出てダメになった女の子たちを私はこんなに温かく見守ってるんですよ、みたいな調子で書いている記事がやっぱり少なくない。なんだあ、これ、と思う」
その言葉通り、永沢さんの『AV女優』のインタビューは、彼女たちがポツポツと語る言葉をていねいに拾い上げ、同情するのではなく彼女たちを応援しているような、真面目で優しい文章でした。僕は真面目に仕事をしていたかもしれないけど、人に対して優しさや思いやりがないんじゃないかと、『AV女優』を読んで教えられました。
その後、永沢さんは作家として次々と本を出します。そのどれもが、弱い人の側に立った文章でした。
―――「緩慢な自殺」 末井昭