id:dominique1228
勝手に引用のことを語る

 翌日の昼になると、高橋の幻覚はすっかり醒めたようだ。ホテルのガーデンレストランで食事をしていても、別に変わった様子もなかった。山崎が「美味かったな」と高橋に話しかけると、高橋は「うん」と答え、それから次のように言った。
「でも、40×16の燕尾服にも困ったよ」
 まだ醒めてはいなかったのである。

―――宮沢章夫「マッシュルームと燕尾服」 (「彼岸からの言葉」所収)