ジョン・ウェインが死んだ。しかしアメリカの民主主義が死ぬわけじゃあるまいし、とジョン・ガンサーは哄った。朝鮮半島では一人の大統領が撃たれて民主主義が謳われ、イランでは一人の首相が辞めて民主主義がややこしくなり、アフガンでは戦車が山を越えて民主主義が山のアナアナになった。忘れてならないのはトルコとマダガスカルだが、ここの民主主義はずいぶん前からてんやわんやだったし、植木等がこれで日本も安心だと歌ったので、民主主義はますます恥かしくなった。大友克洋のマンガは有名になったが、それで民主主義がどうこうなるというほどのことはなかった。好むと好まざるにかかわらずこれが、1979年12月現在の我々の世界だった。大切なのは、人はパンと民主主義のみによって生きるにあらずということだ。米だって食うし酒も飲むし、渡哲也以外のたいていの男は女がいないと生きて行けない。流れ者だって生きるには洗面道具が要る。
た ま に は 戦 争 だ っ て し た い ん だ 、 ぼ く た ち は !
気分はもう戦争. 矢作俊彦. 大友克洋. 双葉社. 1988. p. 31.
「恥かしい」という表記自体もうアレだし、再読していて随分昔のことになったんだなあという感慨があった。
ただわたしは、この作品全体の雰囲気(ふいんき?w)とか、この引用部分とかが、とにかく好きでたまらないんだ。