「職場の女性が3割を超えると、組織が変わる」という実感が海老原(嗣生:括弧内引用者)にはある。米国の経営学者にも同様の研究がある。「ただそのためには何よりも男がもっと育児や家事をするのが大前提。働け、子どもも産め、家事もしろ、と何でも女子に期待することにまずは反省を」と言う。働くついでに男社会の企業風土も変えて、というのは男の手前勝手な〈希望〉だ。
堀江敦子は中学時代から100人以上のベビーシッターをしてきた。キャリア女性の家庭も多かった。「母親1人で育児をしてはいけない」と確信するようになった。子育てを社会でシェアすればみなが幸せになれる――堀江の発想の原点だ。大学を卒業後IT企業に入社、2010年に「スリール」を起業した。
インターンの大学生を募集し、研修ののちベビーシッターを求める家庭とつなぐ。大学生は基本、無給。かわりに「子育てと仕事の両立の、厳しさと楽しさを事前に知る経験」を得る。
「今のご時世で専業主婦願望の女子がまだ半分もいる。この意識を変えれば、彼女と付き合う彼氏も変わる。子育てに参加しない男性もかわいそう。定年退職やリストラで行き場がなくなる男性が多い。子育てさえしていれば、会社と家庭以外に居場所ができる。地域に第3のコミュニティーができるんです」
朝日新聞朝刊. 2013.1.3. p.18. 希望は女子2.ボーボワールの思想を手がかりに.