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勝手に引用のことを語る

 廃校を借り、「共育学舎」と名付けているのは三枝孝之(65)だ。10年以上、若者に気が済むまで無料で寝泊まりできる場を提供してきた。「若い人が迷ったり悩んだりしたとき、『止まり木』のような場所を作りたかった」
 三枝は約10年間「孤立」を選んだ経験を持つ。高度経済成長期の20代。東京などで会社員生活を送るうち、「何のために生きているのか」という問いが膨らんできた。
 40代を迎え、静岡の山間の集落に小屋を建て、ガスも水道も使わぬ自給自足に近い生活に。外部の情報と自分の内側から生まれた「答え」を混同したくなかった。「ただ生きている」という答えに納得するには時間がかかった。
 『ニートの歩き方』の著者で自身もニートのブロガーpha(ファ)(34)は昨年11月、校舎に滞在した。地元の人に頼みごとをして、物々交換で報酬を受け取ることも多い。高い家賃を払うために働くような都会生活とは、同じ「働く」でも違うと感じた。「ここで広大な土地と空家の数々を見ていると、世界を冒険するネットゲームのリアル版みたいだし、面白いんです」。欲しいものはネット通販で買える。「田舎のデメリットって、ずいぶん変わった」

朝日新聞朝刊. 2013.1.7. p.34. 希望は3 孤立. セン の思想を手がかりに.