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勝手に引用のことを語る

 思い出すのはヨーロッパの国境線です。90年代から00年代初頭にかけてヨーロッパを中心にサーキットしていた時代、特に、あの最も過酷と言われるワゴン車移動でのサーキット(3回やりましたワタシは。ワタシは師匠筋が山下洋輔であるという事実からツアー日記のエッセイをあまり書かない様にしておりますが、あれはやはりエッセイの題材のためにあるとしか思えません。文才さえあればワンサーキットで3冊いけるでしょう)の最中「はいいまボーダー越えたぜ」とドライバーが呟き、ひゅーとかいえーとか、或は遠くを見つめながらふふふとか言うのは初日のみでして、二日目からは、これはもう麻酔でも嗅がされたかね。という感じで一切なにも感じなくなります。「はいベルギーに入ったよ。まだしばらくフランス語つうじるね」「タバコある一本?」なんつって。

 そんな中、立川談志氏が亡くなりました。ワタシは誰かが死ぬとサイトに追悼文を書いて、それがいちいち面白いから追悼文だけの本を出さないかと出版社から話が来るというタチの悪い男で(その割には、浅川マキさんの追悼文を集めた本「ロング・グッドバイ」からは、内容がけしからんとハジかれてしまいまして・笑・まあ、そういう感じなんですね)、文筆家の端くれとして我ながらそれもどうなんだと思わないでもない、といった所でしたが、とにかく人にはいきなり死ぬ人とじわじわ死ぬ人がいて、立川氏は典型的な後者でしたので、訃報を受けても「ええ??!!」というよりも「やはりとうとう」という心持ちの方も多かったのではないでしょうか。ワタシもそうでした。

菊地成孔公式サイト 「第三インターネット」 2011.11.24 「アルバム制作快調/立川談志死す」より