岩手県陸前高田市の本稱寺(ほんしょうじ)。住職の佐々木隆道さん(49)は両親と妻を津波で亡くした。寺も自宅も流された。佐々木さんと娘、息子だけが残された。
約200の檀家では約130人が亡くなった。佐々木さんは昨夏、高台に土地を借りてプレハブの仮本堂を建てた。葬儀や法要で伝える言葉は、変わった。
「震災前は『悲しみは時と共に癒える』と話してきたけど、それは間違いでした」。季節が移ろうたびに思い出す。ディズニーランドに出かけた3年前の春、夏の恒例だった庭でのバーベキュー……そんな光景が頭をよぎるのが「しんどいんですよね」。仮設住宅で子供と涙ぐむ夜がある。
震災から2度目のお盆。仮本堂を訪れる人たちに、こう語りかける。「悲しみは癒えなくても、楽しい、うれしいと思えるときは必ずある。思い切り笑ってください。亡くなった方も一緒に喜んでくれるはずだから」。自らにも言い聞かせるように。
朝日新聞朝刊. 8/14 p.34 「迎えの夜、あなたに会いたい」『悲しみ癒えなくても、笑おう』