id:dominique1228
勝手に引用のことを語る

『落ちるリンゴを待つな。』
新社会人おめでとう。君は今どんな職場で出発の日を迎えただろうか。それがどんな仕事であれ、そこは君の人生の出発点になる。
仕事とは何だろうか。君が生きている証が仕事だと私は思う。
大変なことがあった東北の地にも、今、リンゴの白い花が咲こうとしている。皆、新しい出発に歩もうとしている。
君はリンゴの実がなる木を見たことがあるか。リンゴ園の老人が言うには、一番リンゴらしい時に木から取ってやるのが、大切なことだ。落ちてからではリンゴではなくなるそうだ。
それは仕事にも置き換えられる。
落ちるりんごを待っていてはダメだ。
木に登ってリンゴを取りに行こう。
そうして一番美味しいリンゴを皆に食べてもらおうじゃないか。
一、二度、木から落ちてもなんてことはない。
リンゴの花のあの白の美しさも果汁のあふれる美味しさも厳しい冬があったからできたのだ。風に向かえ。苦節に耐えろ。
常に何かに挑む姿勢が、今、この国で大切なことだ。
夕暮れ、ヒザ小僧をこすりつつ一杯やろうじゃないか。
新社会人の君達に乾杯。
伊集院靜
(4/2 朝日新聞朝刊 p. 7 サントリー広告)