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勝手に引用のことを語る

【おはよう】
――経営の目的とは?
 多くの教科書には、成長する、業績を高める、ライバル企業を打ち負かす、それが経営学の目的だと教えている。でも、私の提唱している「正しい経営」とは、人を犠牲にしない、路頭に迷わせない、という経営です。会社に関わりのある人を幸せにする活動こそ、経営だと思っています。業績やシェアなんて、結果としての一つの現象に過ぎません。
――といっても業績を気にしないわけにはいかない
 業績や利益を軸に経営を考えるから、おかしくなるんです。
 コスト削減のために正社員を非正規社員に置き換える。社内でやるべき仕事をきついとか汚いと言って外注する。3人でやるべき仕事を2人でやらせる……そんなことをしていたら、それは、社員がケガしたり、欝になったりします。業績ではなく、社員の幸せを軸に考えるべきなんです。
――でも、それでやっていけるんでしょうか?
 私が回った6600社の会社のうち1割は、好況でも不況でも快進撃なんです。その会社のヒアリングをすると、共通項は社員を大切にする「人本主義」を貫いているということです。業績を高めたいと意図して、達成した好業績ではない。
 社員が自分の所属する組織に愛情を持てば持つほど、業績が上がるのは当然の話なんです。自分の所属する組織に不満や不信を持っている人間が、お客さんにニコニコ顔で対応できるでしょうか?
 自分が虫けらのように扱われていながら、その経営者や上司のために一生懸命働こうと思う人は、そうはいません。
――社員のモチベーションを高めることが大事だと。
 安定的に業績が高い会社で、社員のモチベーションが低い会社はありません。だから、経営者には言います。あなたが高めるのは社員のモチベーションであって、業績ではない、勘違いしないでくださいと。業績を高めるのは、社員の仕事なんです。

フロントランナー 坂本光司さん (法政大大学院教授) 朝日新聞土曜版be青. p. 3. 2012.3.31.