心配してた彼女は、思いの外しっかりとメイクをして、いつも通りおしゃれだったから安心した。
少し顔が青白かったけど、新しい口紅がとても似合っていた。自社製品らしい。さすが女性なら知っているだろう化粧品会社勤め。
「クロワッサン食べるのに30分かかった」と仕事中にlineしてきたのに、定食屋では唐揚げ追加してるし。なんか、ホッとした。
クソ男とは別れるに至らず、連絡をしないようにする、というフェードアウトを取ったらしい。
私はこれがどんなに難しいかわかっているつもりなので、またしてもlineブロックしろと言ってしまった。反省…
どんなに迷っても、泣いても、愛があれば大丈夫だけど、そこに愛はない。未練や同情だ。
「もう大丈夫だから」と彼女は言った。
彼女は彼女なりに下衆野郎を罵倒していたし、頭ではわかってるんだと思う。
もうそんな野郎に会いに行くことはないだろうから、私は彼女の誕生日プレゼントのリクエスト「旅行カバンかスニーカー」は、迷わずスニーカーにした。
奴に会いに行ったときのお土産、「きのこの山ずんだ味」は、奇妙な味がした。もうこれを食べることはないだろう。