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勝手に引用のことを語る

 アルバム『黒い安息日』に収録されている「眠りのとばりの後に~N.I.B.」にまつわる、おもしろい話もある。その頃、ビル・ワードは、彼の顔をくちばし(nib)のように見せるおかしな形のあごひげをはやしていた。ロビン・フッドを演じたエロール・フリンのひげを真似たもので、彼は、しゃれていると考えていたようだ。バンドのメンバーは彼のことをニッビイと呼び、冗談のつもりで、作品のひとつに「眠りのとばりの後に~N.I.B.」とつけたのだった。
 彼らには、悪意のかけらもなかったが、実は知らぬうちにとんでもない間違いを犯していた。初めてのアメリカ・ツアー中のことだ。あるショウが終わると少年がサバスのところに来て、Nativity In Black(黒い降誕)という曲を書いた理由を知りたいと尋ねたのだ。その少年は、その曲が魔王への賛歌だと確信していた。サバスは少年を喜ばすために、彼の考えに同意した。ここにまた、永遠に残る伝説が生まれることになった。偶然ではあったが、1970年7月に予定されていた、サバスにとっての初めてのアメリカ・ツアーは、チャールズ・マンソンの「悪魔の奴隷」が起こした血生臭い殺人事件に結びつけられることを恐れて、延期せざるを得なかったという事実もある。

(ギャリー・ジョンソン 著,池谷律代 訳『オジー・オズボーン 狂気のエンターテイナー』シンコー・ミュージック,1987年,16頁-17頁)