清遠のほうはといえば、下元に不敵な笑みを向けた。
「そう来なぁいかん。知的労働を買い叩く会社は大成しませんき」
そして誰にともなく喋りはじめた。
「まぁ地方にはありがちなことですけど、プランナーだのデザイナーだの、脳味噌を使(つこ)うたりセンスを使うたりする仕事は『元手がタダやき安い』と思うちゅう人間が多くて辟易しますわ。企画らぁ頭でちょっと考えるだけやろう、デザインらぁチョチョッと描くだけやろう、とねえ。知り合いのデザイン会社の社長がこぼしちょりましたけど、社章をデザインせえというような仕事で『ちゃっと描いたがでえいき二、三万でできるろう』なんてことを平気で言う客がおるそうで。また、そういう客に限って出来上がったもんにぐちゃぐちゃ文句をつけるがですな。こればかりは都会からイナカモン扱いされてもしゃあない部分で。ともあれ、おもてなし課はそんな了見やのうて良かった」
(有川 浩『県庁おもてなし課』角川文庫,2013年,133頁)
地方に限った話ではないかもしれない。