フリーセックスは、一夫一婦制による性の罪悪視、男女差別、子どもの独占扶養で生じる出世主義から結局管理社会に奉仕してしまう点など、血縁を中心とする核家族制破壊が目的だが、これほどコミューン外の人間から誤解を受けやすい方式はない。
当然これを実行に移すには幾つもの技術や心構えがいる。
例えばツイン・オークスでは、外の世界で続いてきた男女間の役割や役割演技を完膚なきまでに剥ぎとるから、男は女をハントし、女は簡単に落ちないわよという演技、相互に相手の気をひくなど、相手の期待に添うためのお馴染みの馬鹿げた演技をせずにすむ。
こうして男女関係の見かけの神秘性がいっさい剥奪されているから、いきなり相互の実質でつき合える。また美貌の相手に引かれるということすら外の世界の価値観なので、長くここで暮らすうちに容貌よりも人柄という実質が尊重され出す。
外の世界ではホモにも男女の役割演技が影響しているが、ツイン・オークスでは彼らもそれから自由になれる。
また性の相互独占契約としての一夫一婦制のせいで、特定の異性や同性としか親しく話ができないという制約がなく、セックスの有無にかかわらず自由につき合うことができる。
ツイン・オークスにも夫婦は五組いるが、初期にはたがいの関係を保持するのが極めて難しかったという。
いずれにしても異性とのセックス抜きのつき合いが自由なのは貴重なことだ。
労働だけでなく、バスルームなども男女の別はない。
越智道雄『アメリカ「60年代」への旅』朝日選書,1988年,111-112頁