『謎の独立国家ソマリランド』高野 秀行
・面白かった!!
・理解不能な謎国家かと思ったら、極めて真っ当も真っ当。地上のいかなる民主国家にも引けをとらないどころか、むしろ先進性を持った民主国家だった(著作ないでは“ハイパー民主主義”と表現されている)。ソマリランドを謎にしているのは、「紛争してなきゃニュースにならない」というこちら側の姿勢によるものだった。
・ソマリランドの民主主義は、イスラムの教え、つまり、神との契約、それに則った社会との契約を厳密に謙虚に真摯に運用した結果生まれた、当事者にとっては当然の産物だった。神様は風土から生まれるもので、だからその教えは風土、その土地に生きる人々と社会に適切なもので、だから当事者にとっては当たり前で、他者にとっては謎なのだなぁ。
・イスラム国家についていろいろ言われる現在、ソマリランドとその周辺地域の過去、現在、これからは、もっと注目されるべきだと思う。先入観なしに。
・最近、ホームグロウンテロリストという言葉が聞かれるけれど、彼らは信者としては実際は育っていないんだって思う。ちょうど作品の中でもラピュタが引き合いに出されているけど(謎という意味合いでだけど)、「人は地面を離れては生きていけないのよ」の台詞は宗教にも当てはまるのではないかと思う。今、ホームグロウンテロリストと呼ばれる人たちは、母国には国民として根を下ろせず、信者としても育つべき大地がないままに鎧だけ着せられたのではないかしら。
・ソマリランドでのイスラムの教えの機能の仕方を読むと、日本で生まれた自分にも宗教の形はとらないまでも何かしらが育まれているのだろうなぁと思う。好むと好まざるとに関わらず、自覚する、しないにも関わらず。でも、それがその人々、社会に最も適切に機能するのであれば、「西洋では通用しない」というだけで悪と見なす必要はないのかなぁと思った。ここしばらく悶々と考えていたことの一つの回答になったようで、ちょっとすっきりした。
ただ、宗教の形をとらないと、自覚はし辛いよね。
・あと、中国が古代から現代まで、ほぼ完成形の国家形式を継承してきた奇跡っていうのは、中国皇帝の座というのが“契約”で与えられるものだったからかなぁとも思ったり。国家体制、政治システムとしては脅威の完成度なのかもしれないけれど、宗教システムとも比較したら、意外と共通点があるのではないかしらと思ったり。思っただけだけど。
・ていうわけで、感想のほとんどが内容ではなくて、内容から考えさせられた事柄になっちゃったけど、その辺のことも学べる本はないものかしら。他にもいろいろいろいろ考えたんだけどなぁ。おもしろかったなぁ!
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