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読了のことを語る

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること ニコラス・G・カー
原題は”THE SHALLOWS What the Internet Is Doing to Our Brains”

脳の可塑性は従来考えられていたように若いころに限ったものではなく、生涯続くものである。
たとえば視覚を失った人が点字を学ぶと視覚領域は指先の神経を司ることにとって代わる。
この事実は希望と共に大きな危険に注意を喚起する。
脳はテクノロジーの進化に応じ、使用頻度の少ない領域を使用頻度の高いもののために文字通り作り替えられ
脳の形態が変わると人はそれ以前の状態と比較することが出来ないため、それに気付くことが出来ないからである。
という出だしで始まって、テクノロジーの歴史とそれが人類に及ぼした影響を研究した本。

テクノロジー=機械と考えながら読んでいたので
初期のテクノロジーの一つとして文字が紹介されていてびっくりした。
文字の登場は暗唱によって物事を伝える音声表現文化を徐々に衰退させ
本は朗読から黙読向けに発展し、音声表現での機微を補うための語彙が大幅に増え
冗長で抽象的な考えは推敲、整理され、論理的な思考が社会的地位を獲得するようになる。
読みやすくなった本は宗教、哲学の枠を飛出し娯楽本が登場。娯楽としての読書が定着する。
やがて本は録音され、映像になり・・・
と、風が吹けば桶屋が儲かる式にテクノロジーの進化が文化を変えていく。
そして現在インターネットは人類にどのような影響を及ぼしているのか。

一つの文明はそれ以前の文明を終わらせるというのは予想がついたけれど
たとえば歩くのが当たり前の時代から乗り物の文化になることで体格が変化するように
テクノロジーの変化で脳がどうこうなるという可能性に正面から向き合ったことがなかった。
去年もっとも衝撃的だった本。うわーーーーって思った。