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読了のことを語る

愛子とピーコの「あの世とこの世」

オカ板まとめスレみたいなものを予想して図書館で借りてきたけど、タイトル詐欺だった。
精神世界とオカルトについて書いた本かと思ったら、不思議話を枕に話は始まったけれど、
江原の思い出 →江原への疑念 →江原批判 →社会批判 →戦後教育批判 →女性批判
と、いつの間にか桶屋が儲かりだし、女性と母親と若い女&その子供たちをひたすらこき下ろすという意外な展開に。

×2の佐藤愛子は離婚するなんて我慢が足りないと言い切るし、ピーコはピーコで
「相手の立場に立ってみてあげる力がないのかしら」
と熱く語りながら一貫して妻・女性の立場に立ってあげるという話には1ミリもならないのがすごい。

くわえて二人とも(特に佐藤愛子は)「子供の人権? はん、それ食べられるの?」という感覚らしく、
「(食わせてもらってる)子供の気持ちを考えろなんて言い出してから躾が及び腰になった」
「大人が理不尽なことをいうのは当たり前、それで理不尽に耐性がついた」
「昔は戦争だって進んで行って犠牲になる精神があった」
「今は『閻魔様に舌を抜かれる』と言っても閻魔様はいるかだなんて理屈で考えようとする」
と言ったあと、
「最近の人は自分の頭で考えない」
と言ってみたり、二人とも人を混乱させる才能はかなりある。
ほんのさわりをいくつか大手小町に投稿するだけでかなりプレビューが伸びると思う。特に佐藤の
「舌切り雀の結末に出てくるお化けで傷つく子供には生きていく資格がない」
には度肝を抜かれた。このほかにも
「アロマで癒されるなんて思い込み」「江原のショーを見て波動が上がるわけがない」
など、こんな雑談で本になるなんて二人の芸歴はたいしたものだと感心せざるをえない。

ここまで滅多打ちにしてから結論として
「人を思いやれない情のない人間、恨みつらみの多い人は地獄行き」
と言い切るなんて覚悟が決まっているのか呑気なのかわからない。

もしかしたら愛子とピーコが語る「あの世とこの世」とは戦前戦後のことなのかもしれない。
そうだとしたら
「勝手に現生と死後の世界と勘違いしたお前が悪いんだよ、まったく近頃のばかな女は」
とどやされた挙句小一時間不景気も原発も地震もおまえらのせいだと言われかねない。
(佐藤「天災は天罰だと言った方がいい」「日本はもうダメ。一回亡んでやり直した方がいい」)
やはり恐れるべきは生きた人間だ。そんな怖さを感じさせる本だった。