スプーン・インタビュー 大江健三郎さん|コマツ・コーポレーション 小松写真印刷|山形 印刷 出版
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「土門さんは私の顔を見るなり、極めて憂鬱そうな表情を浮かべられましたが、何とか気を取り直されて、「きみの書斎を見たい」と言われました。書斎と言っても、本と机だけの部屋です。ところが、その本棚に、小説家の中野重治とフランス文学者の渡辺一夫の本がほとんど全部並んでいるのを見て、土門さんはみるみる機嫌を直されたわけです。土門さんは、中野重治という作家が本当に大好きなんです。「渡辺一夫の本を、きみはなぜ集めているんだ」と言われた。そこで私は、「四国の森の中に生まれて、高等学校を卒業する時には、森林組合に雇われる予約までしていたんだけれども、渡辺一夫さんの『フランスルネサンス断章』という本を読んで、この先生の教室で勉強したいと思った。その後で森林組合に帰ってこようと思って、母親を説得して、東京に出てきた。渡辺先生の教室に行くことができたけれども、学者になるほどの力はないので、大学に残ることはできないで、小説を書いております」と言いました。それから土門さんは、パチパチと私の写真を撮って、一段落すると、こうおっしゃいました。「自分は、これまで本当に美しい顔の日本人の男に三人会った。一人は、六代目尾上菊五郎である」、そして、もう一人挙げられまして、「三人目が渡辺一夫だ」と。それが、土門拳さんとの最初の出会いでした。
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あとのひとりは誰なの!?という疑問はおいて、
先日『核時代の想像力』をよんだところなので感慨深いです