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読了のことを語る

プリーモ・レーヴィ『アウシュヴィッツは終わらない』(朝日選書)

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「オデュッセウスの歌」の章のところで泣いてしまった。スープを運びながらアルザス生まれのジャンに『神曲』の一部を訳しながら伝えるところ。確信はないけれど(原文を知らないし、わたしには推測不能なものもあるので)、この本の章題のいくつかはなんらかの文学作品等(聖書含む?)のもじりなりそのままになっているのではないかと思われる。「夏の出来事」「善悪の彼岸」、さいごは「十日間の物語」だ。
わたしは、本を読む際にその内容そのものよりもそれがどう書かれているかという「語り」がいちばん気になる。技術的な問題を問うているだけではない。そこにこそ、著者の「考え」が的確に、恐ろしいほどにあらわれてしまうからだ。この唐突な断片、ともすれば読みにくくぎくしゃくしたと受け取られそうな繋ぎ、章題、そして原題「これが人間か」であることをもってして著者の言いたいことは明らかであると思う。