『恐怖省』グレアム・グリーン(著) 野崎孝(訳) 早川書房
こった構成の4部仕立て。欠落によって不幸にある人間がさらなる欠落によって幸福になり、ばらばらに散らばった欠落を徐々に取り戻していくことによって、不幸も幸福も秘密も嘘も常に抱える、愛と恐怖の両方を知る人間になる話。
最後まで読んで『フラワー・オブ・ライフ』思い出したわ。
スパイ小説の一つとは思うのだけど、この人の書くスパイはどれも、孤独で完結していて、厳しい守秘義務ゆえに本当の私生活は持てない存在。この主人公もその意味で、グリーンの主人公らしいと思う。彼自身はスパイじゃないけれど。
