『叔母との旅 グレアム・グリーン全集22』 小倉多加志(訳) 早川書房
主人公は50過ぎの平凡で自己満足した引退生活に入った男、彼は母親の葬式で、50数年ぶりに叔母と再会する。彼女はエキセントリックかつチャーミングな女性で、次々に彼が知らなかった事実や人々の話をする。ちょっとした旅行に誘われた主人公は、二、三日の観光旅行と思い承諾する。彼はまったく知らなかったのだ、叔母が生粋の旅人であることを。
イギリスの小説で叔母と甥となるとだいたい一筋縄ではいかないものだろうとは予測していたけども、これは読んでてとっても楽しかったし、人間的だった。いつからだって冒険は始められるし、人生は変えられる。最後に、読者も途中から薄々気づいてる真実がさらりと自然に明かされるが、そのシーンのなんと映像的なことよ。目に浮かぶような鮮やかさ。過去のエピソードと現在が複雑にからまっていく、その楽しさ。
これも映画になってくれないだろうか。なんて映像的な話を描くのだろう、グリーンは。
