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読了のことを語る

『情事の終り』グレアム・グリーン(著) 田中西二郎(訳) 新潮文庫
「いま読んでる本」にも書いたけれども、前半で苛立ったのが、第三部でひっくりかえった。このタイトルとこの前半から、まさかこんな、信仰と愛と憎しみについての物語が描き出されるとは思っていなかった。感情が盛り上がってではないと思うが、気づくと泣いていた。
人格のないものを、人間は愛することも憎むこともできない。個人にとって意味のある存在するものとして認識することもできない。信仰の対象となるものを、自己にとって意味ある個の存在とする、その過程。
シャマランの『サイン』を思い出した。愛そうが憎もうが、その存在を信じていることには変わらない。悔しいことに。