『エリザベス朝演劇集Ⅰ マルタ島のユダヤ人/フォースタス博士』 クリストファー・マーロー(著) 小田島雄志(訳) 白水社(
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NHK芸術劇場で放送された『ファウスト博士の死』がとてもおもしろかったので、原作読んでみたくなり借りた。
この人はあくなき「欲望」にとりつかれた人間を書くのが大好きだったようだ。しかしわたしは、『マルタ島のユダヤ人』の主人公バラバスの、金銭欲と言うよりも復讐心(シャイロックにもっと根性があればこうなったと思うし、この方がわたしはやけくそで大好きだ)、『フォースタス博士』はなんだか、こないだ読んだ『罪と罰』を思い出した。知識欲というのとは何か違うと思う。
メフィストフェレスはバラバスと気があっただろう、彼の徹底的な復讐心をおもしろがっただろう。でも、彼の命をほしがるだろうとは思わない。なぜならバラバスは自身の悪行を決して苦しみはしないからだ。フォースタスのように、迷いはしない。メフィストフェレスがほしいのは、迷う命だ。地獄に行くことに苦しむ命、どちらを選ぶのか瀬戸際にある命だ。それでこそ地獄の責め苦に意味があるのだから。
芸術劇場版では、原作で扱われるカルロス五世とグレゴリウス五世のあたりのごたごたに絡む部分は省かれていた。また、ト書きに書かれていない部分の演出がすばらしかった。メフィストフェレスがどんだけこき使われてたか、それがどれだけ観客にウケていたかは、この脚本だけからはわからない。このへんに、実際に演出をされ、上演をされることのいみがあるのだとしみじみ感じた。
クリストファー・マーロー、好きです。わたしには、シェイクスピアよりも、登場人物が生々しく感じられました。
読んでよかった。
