今回の中野裕太には、一切それがなかった。
ここまでそう言う放送をしてきてるんだから
怒られたり失敗したりはタレントがぶち当たった「壁」として
番組の盛り上がりどころとして放送しないはずないと思うんだけど
彼がぶつかった壁は、取引先へのプレゼンがうまく行くかどうか、ということで
少なくとも、勝手のわからない仕事場で勝手が分からず怒られる、というような壁とは次元が違う。
その職場の「仕事」でぶち当たる壁であり、それは彼が、7日間、その職場で「仕事」をし、同僚に信頼されている事を伺わせるものだった。(しかも、その時点で既に別の取引先との商談が成立しており、実績を一つ作ってる)
それを可能にする彼の能力の高さが鮮やかで、同時に、受け入れる側の青果市場の人が、始終彼をリラックスさせ、楽しそうに「野菜の事」を教えており、その効果もあるだろう、と思えた。
一度だけ、彼の上司である丸山さんが怒鳴るシーンがある。
丸山さんは、青果市場の元セリ人で、現在は全体を見渡す役をやっていて
既にセリ場にはたたないんだけど、築地市場では伝説的な、セリ人の中で一目置かれるような立場の人。
中野が働き始めた日、セリで間違いがおこって、それに対して怒鳴ったのだ。
それは気っぷのいい、激しい罵倒なんだけど、でもちょっとユーモアもある。
でも丸山さんは、一度も中野裕太に声を荒げなかったし、他の若い子にもそうだった。
だいたい中野は、決して礼儀正しくはみえない。
敬語は使えるけど基本的にため口だし、服装や、気怠そうな雰囲気には、眉をひそめる人もいるかもしれない。
初日に青果市場に来たときなんて、丸山さんが制服の帽子を脱いで挨拶したのに対し、
私服の帽子を取らずに頭をちょこんと下げただけだった。(その後、制服を着ている時はきちんと帽子を取って挨拶していたから、単純に帽子がファッションでセットだったんだろうと思う)
制服に着替えた時は、シャツがでており、とりあえず丸山さんは、それだけを注意する。
やんわりと、気楽な口調で。中野に対する「注意」だとか「ミスの指摘」のようなものは
その一回だけだった気がする。
45分、見ていて気分が良かった。良い職場だったし、そこで働いている青果市場の人が
「野菜が好き」で仕事のできる人たちだった。中野はその人達の中に混じって
好かれて、そして自分も、この人たちが大好きだ、と言った。
「愛情がたっぷりあって、自由」と評した。
実務の覚えが早い、という事もあるだろうが、とにかく中野は楽しそうに、そして真剣に働いていた。
仕事が、できる人たちを見ているのは楽しい。
いつも、こんな感じだったらいいのに。面白かった。
