祖母(東アジア離れした彫りの深い目鼻立ちと輪郭でマダム感たっぷり)と叔母(くりくりぱっちりの愛嬌ある顔でモテる系)に挟まれて、よくいえば上品なこけしみたいな地味顔の母は容姿に強いコンプレックスを抱き続け拗らせた結果いわゆる「キレイになる努力」を賤しいものとみなして全否定するようなところがあった。
そして少しでも自分の容姿に触れられると激怒する。
介護施設にお世話になり始めた頃、スタッフさんなどが打ち解けようと「おきれいな方ですね」的な社交辞令を言うとひどく荒れた。
わたくし自身の抱えるコンプレックスは多分に母の薫陶を受けたものだから、わたくしにはそのへんが我がことのように思えた。
でも今すっかり老いていろんなものが削ぎ落とされてみると、地味さに隠されていた骨格の美しさが驚くほど際立ってきた。
なんにもつけない肌は色白できめ細かいし横顔の輪郭なんてネフェルティティそっくりでちょっと貴婦人みたい。
母だと思わずに遠くから見るとはっとする。
見ず知らずの人に「なんておきれいな方でしょう」と一度ならず言われたことを母に、というか母の中でずっとコンプレックスを抱えていた女の子に伝えたいけど、もしわかったとしたらやっぱりそこで怒るんだろうな
