雰囲気のいい、一枚板のカウンターのある静かなバーで、白州のオン・ザ・ロックが飲みたいなあと思う。
もちろん、灯りは暗くて、適度に広くて、人が少しいる感じがいい。
木の重いドアは夏の間は開けてあるようなお店。いつ入っても出てもいい。
マスターは無口で、客との距離をよくわきまえた感じのお店。
BGMはフランク・シナトラ。もしくはスウィングジャズ。
別にセロニアス・モンクでもトム・ウェイツでもいい。
基本的に何でもいい。ジャズなら。
時間は7時か8時くらいがいい。深夜に気軽に新しいバーに入るのは難しい。
つまみは野菜スティック。自家製の塩が入ってないマヨネーズにつけて食べる。
そう、色々シングルモルトは試したけど、白州が一番好きだ。
一つの樽から取り出した18年もののカスケードを、以前山崎蒸留所で飲んでから虜になった。
バーのお酒は一人で飲んでもいいところが好きだ。
色んなことを考えながら、飲むのである。たとえば、4000年かけて人類はどんな風に犬を家畜化してきたのか、
とか、付き合った女性にはどれくらいの頻度で「可愛い」という言葉を用いるのが適切なのだろうかとか。
ふとした出会いがあるのも悪くない。
と言っても、未だに一晩を共にした女性に会ったことも、人生の教師となる人に会ったこともない。
けれどもバーでたまたま会った人と話すのはなかなか悪くない。
最後にぼくがバーに行ったのはシンガポールだ。
「友達のライブに来てね。酔っ払っちゃった。ライターある?」
という40歳の素敵なインド人の女性と夏みたいに暑い12月のテラスでビール一杯を飲んだ。
そう、バーの何が素敵かって、そりゃ世の中には色々な人がいるって身をもって知れることだ。
40歳のキレイなインド人がいるって、君は知らなかっただろ?
そんなわけで、近くバーに行こうと思う。春用に新しい紺スーツを買って、革靴をピカピカに磨いて。
まだまだ寒いけれどね。でも琥珀色のウィスキーは腹の底から君を温めてくれるだろう。
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