別れた彼女はよく笑う人だった。
下品な笑い方じゃなくって、くすくすって感じでいつも笑ってる人だった。
はにかみ屋で、いたずら子っぽく、小動物みたいに動作が可愛いかった。
橋の欄干を叩いたり蹴ったりした時の音の違いがわかる人だった。
3回くらいしかまともに話してくれなかったけど、自分の仕事にとても誇りを持ってる人だった。
彼女は特殊な仕事をしてて、本当は地元で働きたいんだけど、仕事がなくて上京していたのだ。
体が悪いのに、休みなく働いていた。政府の特命を受けていたからだ。嘘だけど。
よく倒れたり、体調が悪いので、結婚して一緒に暮らそうと言っていた。
けれど、それは彼女にとって嬉しくない提案だった。
彼女にとっての仕事とは彼女自身であることの証明だったから。もういつ死んでもいいと思ってた。
その意思はとても固かった。さざれ石よりも一年凍らせた白クマのカップアイスよりも。
どこにも出口はなかった。だからぼくらは別れた。
いつ死ぬか分からないくらい彼女の調子はよくないし、ぼくは力になれなかった。むしろ疲労させてた。
ぼくは何をすればよかったんだろう?と時々今でも思う。
ぼくがもう彼女にできることは健やかに生きて、死ぬ時は安らかでいて欲しいと祈るだけだ。
運がよかったら、本を書き上げて形にしたて、彼女に贈りたいと思う。
けれども人はいつ死ぬか本当に分からないのだ。
というのは先週の真夜中に、パツキンロン毛のぼくにもふと心臓が脈打つのをやめた瞬間があったからだ。
悔しいとかさえ思う余裕もなく、死ぬことがあるんだなとその時本当に思った。
ぼくの人生は大半が悔しいものだ。このまま悔しいままで意識がなくなるのは本当に嫌だ。
どうしたらいいかは自分が一番知っている。そういう自分を忘れずにいたいって心から思う。
自分(id:happysweet55)のことを語る
