村上春樹さんの新作をようやく買って、読んでる。
読みながらぼくが思い出すのは、
ドイツとベルギーの国境を越える電車を降りて、
立ち寄ったリージェという駅で知り合ったタフでチャーミングなチョコレート会社の日本人の女の子のこと。
女の子と言っても、もう30越えてたけれども。
ぼくらはクリスマスイルミネーションで飾られたブリュッセルの街を歩き、
落ち着いたフランス料理店で食事をし、なぜかウェイターの更衣室でタバコをふかし、
夜遅くまで人生について語り合った。最近知り合った素敵な女性にも似てる。
それからブリュッセル、アントワープ、アムステルダムを廻って、
たどり着いたベルリン駅のすぐ脇のホテルで深夜2時に見た不思議な光景。
何かに誘われるように目を覚まして、窓の外を見たら、
一面雪で覆われたベルリンにまるで十字架のように水銀灯が並んで静かに灯っていたのだ。
ただそれだけなんだけど、恐ろしく静かだった。静けさの質が今まで体験したことがないものだった。
その時、その体験について、ぼくはうまく説明できなかったんだけど、今は言える。
それはぼくがずっと抱えていた青春が終わってしまったということに気がついた瞬間だったのだ。
ぼくの大学時代に大切にしてきた友人や知り合いたちは、まともに社会に出ることができなかった。
ぼくらはお互いが大切で大事にしてたんだけど、霧のように散り散りになってしまったのだ。
20代のぼくを支えてきたものはは、それに対する怒りだった。
あるいは、不必要なものを不必要なくらい作り、それを売りさばくために、
人を人と思ったりしない行為や理不尽な戦争を見て見ぬふりをしなければ、生きていけない、
スタート地点にさえ立てないような社会への怒りだった。
そういうものがじわじわと力を失い、息絶えたことを知った瞬間だったのだ。
本とは全然関係ないけど。で、はじめに戻ると、「この本は『国境の西、太陽の南』に近いよ」と言う人の感想に近い。
久しぶりに、春樹さんは生きて行くことの痛みを真正面から書いてるような気がする。
自分(id:happysweet55)のことを語る
