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化けの皮ガス爆発のことを語る

私の所属しているあるグループに、軽い知的障害のある女性(Kさん)が遊びにくるようになった。
初めて会った時、Kさんはたどたどしくも一生懸命に自己紹介してくれた。
耳に補聴器があるのを見つけた私は、はじめKさんの知的障害に気付かず、耳が聞こえにくいから話すことも苦手なのかな、程度に思ってゆっくりながら普通の調子で自己紹介した。
その時のKさんはそわそわしていた。聞き取れないだけではなく、もしかして意味を追うのが難しいのかな、と気がついた。
Kさんは、ひとことしゃべるのにもとてもがんばって言葉を探さなければならないようすだ。
それが分かったので、私はKさんと話す時、なるべく分かりやすい表現で丁寧に話すように心がけたつもりだった。
だけどKさんは「分からない」という顔をして、すぐに他のメンバーのそばへ行ってしまう。
すでにKさんと知り合いになっていたそんなメンバーたちがKさんとどのように付き合っているのか、私は観察した。
彼らは「そうなんだ〜」とニコニコしながらKさんの話に相づちを打ち、Kさんがおどけてみせると手を叩いて大げさに喜んでみせていた。そして後で「なんて言ってるのかわからなかったねー」と、苦笑いをする。
Kさんは私とよりも彼らと話したがるのだから、彼らのやり方のほうが正解なんだろうな、と思った。

昨晩、いつものメンバーが集まって、そこに外部のお客さんも来ていて、自然に作業するグループと談笑するグループに別れてそれぞれ過ごしていた。作業するスペースは狭いので、作業しない人は気兼ねなく談笑するのがグループの明文化されたルールだ。
Kさんは最初談笑するグループにいた。私は作業するグループにいた。
作業はかなり慌ただしく、刃物も使うため、もう他の誰が加わろうとしても邪魔にしかならない。
そんななか、Kさんが「なにか手伝うことありますか」と声をかけてきた。
「なにもないから向こうでみんなと話してて大丈夫だよ」と一人が答えると「話す人がいなくてつまらない」と言うのだ。
私は、作業しながらでもKさんの相手をするにはこれしかないと思い「Kさん、しりとりしようか!」と誘ったが「しりとりはしたくないです」と断られてしまった。
ああ、Kさんはもしかするとしりとりのような言葉遊びが苦手で嫌な思い出もあるのかもしれない、そう思ってそれ以上は何も言えなかった。
Kさんはどのメンバーとも離れたすみっこのソファに座って、そのうち眠ってしまった。

夜も更けて、ひとり、またひとりと帰宅し、Kさんも帰宅して後片付けのために数人が残るだけになった。
メンバーのひとりの電話が鳴った。会話の雰囲気から相手はKさんだと分かった。
どうやら、まだ残っているひとがいるのだったらもう一度来たいと言っているようだ。
「もうみんな帰るところよ。今から来ても誰も残ってないよ。」電話を受けた人はなだめるように答えていた。
実際に片付けているところではあったが、電話が終わると皆作業の手をとめた。
ひとりが言った。「Kさんがあんなわがままを言うのは私たちが甘やかしたからじゃないかな。普段からあまり構わないようにしたほうがいいんじゃない?」もうひとりが言った。「Kさんだって成人した大人なんだし。Kさんばかり構っていたらほかの人が嫌がると思う。」
そのふたりは、「そうなんだ〜」とニコニコしながらKさんの話に相づちを打ち、Kさんがおどけてみせると手を叩いて大げさに喜んでみせ、そして後で「なんて言ってるのかわからなかったねー」と、苦笑いをしていた彼らだ。

切なくなった。私は言った。「Kさんは大人になれない、周囲のサポートが必要な人だよ。私たちがKさんをサポートする様子を見せていれば、ほかの人もKさんとの付き合い方がわかると思うんだ」
このグループのリーダーが「ここには色んな問題を抱えた、いわば社会不適合者が集まる。もし、Kさんばかり贔屓してずるいとか、Kさんがいることが嫌だ、なんて言う人がいるのなら、そのひとには来てもらわなくて構わない」と言って、その場はお開きになった。

実際、Kさんの相手ばかりしてほかの人と会話できないストレスが、例のふたりにはあったのだろうと思う。それを他人への気遣いのようなものに言い換えて訴えるのだから、リーダーの言葉に納得できたとは思えない。
私も、どうしていいのかわからない。真剣に向き合おうとするほどKさんは私から離れていく。