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はちのことを語る

[ものぐさリンピック ノンフィクションの部]

①死刑執行人の苦悩:大塚公子、角川文庫
②死体は生きている:上野正彦、

①は刑務官に取材した内容の連載をまとめたもの。筆者は死刑反対論者(明記されてないけどそうとしか思えない)。
1988年刊、取材内容は昭和30年代を中心としており、新しくて1985年なので現状とかなりの開きがある。
死刑囚が拘置所でどのように変わっていくか、素晴らしい人間になるか、刑務官とうちとけるか、
最後はその刑務官が自らの手で死刑囚の命を絶つことの苦悩、疑問、心の傷を書いている。
そして死刑という殺人をさせてよいのか、更正した立派な人間を死なせてしまっていいのか、と問いかける。
感情論にはしっているきらいがあるが、死刑制度について考えるには悪くない1冊。
死刑制度と刑務官の職務については切り離して考えるべきだというのがいちばんの感想。
確かに会話をし、変わっていく人間を死に追いやることの心苦しさは想像もつかないが、
法治国家の日本においては一公務員である刑務官がひとつの仕事をするのみである。
元法務大臣H山氏の言葉を借りれば「正義のもとに」行われるものであるから
刑務官がその職務について恥じたり後悔したり、まして侮蔑されるものではない。
数年前に元男性刑務官が死刑執行経験者としてその行為の残酷さ、制度の反対を訴えていたが
そちらのほうが公務員として恥ずべき言動であると思う。
日本の正義が要求していることに堂々と向かっているのだから公務員たる者、反発は不適当である。
理屈と心情は別物だけど、嫌なら辞めるしかない。職業上いたしかたない部分は誰でも持っている。
また、そもそも悪いことをしなければ死刑にならないのだから(冤罪については別テーマ)、
死刑囚がその罰を受けるのは自業自得であり、死刑廃止にしたければ犯罪撲滅を訴えればいいと思った。
素晴らしい絵を描こうが、宗教の高みにいこうが、誰かの命を奪った事実に変わりない人間なのである。
死までの準備をしてもらい、直後に丁寧に納棺までされるほど死刑囚の人権なるものは丁重に扱われている。
その生活の中で自分の犯したことを理解する者もいるかもしれないが、それでは遅い。

②は東京都監察医務院で監察医をしていた上野氏の有名な1冊。
監察医(こちらも東京都職員で公務員)時代の経験から法医学と死者の人権についてわかりやすく書いている。
何が原因で、どういった状況で死んでしまったのか、それを明らかにすることで故人の名誉を守るという立場。
人体は正直に証拠を残す。
また、脳死についても触れられている。臓器移植法施行前の著作なので脳死を人の死とすることへの疑問を述べている。
扱っているテーマは死者の解剖であるが、人間が生きていることへの問いを感じられた。