【めも】【勝手に引用】
生活の豊かさは何で決まるのか。持っているお金の量? それともその人が抱く満足感? いずれも不十分と考えたのが、インドの経済学者アマルティア・センだ。所得の不平等や貧困・飢餓の研究で1998年、アジア初のノーベル経済学賞を受けた。独創的な業績の一つが豊かさの考え方だ。
センは、個人が実際に選べる生活の「幅」こそが本質だとした。主流の経済学や政治哲学が、社会が保障すべき「平等」の問題をお金や財などの分配から考えたのに対し、センは実際にそれらが使われて「機能」が発揮される「場」で考える。お金の量よりも、お金によってその人が実現できる選択肢の「幅」がどれくらいかを重視した。セン本人の使う例によると、飢餓と断食は同じ「食事ができない」状態だが、豊かさの評価は大きく変わるからだ。
団地の住民と農家、都会で疲れた若者と過疎化が進む田舎の間に生まれた緩やかなつながりは、互いの生活の「幅」を広げたと考えれば、豊かさを生み出していると言える。お金やモノを追及することばかりに価値を置かないセンの立ち位置は、私たちの生きるヒントにもなりそうだ。
朝日新聞朝刊. 2013.1.7. p.34. 希望は3 孤立. セン の思想を手がかりに.
