id:dominique1228
おはようのことを語る

【勝手に引用】
きょうはエルメスにパステルピンクの何かふわふわしたぬいぐるみ着けてた娘御も発見。

その昔、故・景山民夫が「ONE FINE MESS」(ブルータス連載をまとめたもの)で日本人がブランドバッグを求めて本店に殺到するさまを見て、漏らした感想が忘れられない。最初に読んだのが高校生のときだったからかもしれない。

Kが入れてくれたミルクティを飲みながら、僕は途中の簡易食堂で買ってきたフィッシュ・アンド・チップスを朝食代わりに食べる。これから、ロールスロイスを買いに出かけようって人間が1シリング15ペンスのフィッシュ・アンド・チップスを一生懸命になって食べている。ううむ、ここには紛れもなく現代日本社会の縮図がある。この瞬間にも、きっと、パリのエトワール近くのルイ・ヴィトン本店には、アエロ・フロートのエコノミークラスに乗って渡仏したOLが列をなしているに相違ないのである。イギリスでの“ミドルクラス”は労働者階級からやっとこ一ランク成り上がったものに対する蔑称だが、日本で、その訳語と思える“中流階級”というと、標準以上の豊かさと知性を持つ者の意味になるらしい。ダーバンを着て駅の立ち食いソバを朝食とし、ルイ・ヴィトンを抱えて定期券を買う列に並んでいる人たちのことだ。ロンドンでヴィトンを持っているのは、ロールスに乗っている人物か、ロールスに乗った人物に買われる女かの、どちらかである。

ONE FINE MESS. 世間はスラップスティック. 景山民夫. マガジンハウス. 1986. p.223.